きもの屋さんって、ついつい専門用語を使ってしまいます。
けっこう昔の言葉や寸法や重さの単位(尺寸や貫目など)を当たり前のごとくお客様に使ったり、知って当たり前と思う着物の名称や専門用語でお客様と会話をしたりしてしまいます。
これではこれから着物ファンになろうとしている人や初めて着物を買おうとする人が不安になり、きもの屋さんから離れていってしまいそうで・・・チョッと心配です。でも、この世界の言葉をチョッと知っていると博学のような気がして友達や家族に自慢できて(少し大袈裟か?)、きもの屋さんに行っても少しは肩が張らずにすむかも。
そしてもっと着物の世界が楽しくなると思います。という訳で「きもの屋言葉」をいくつか簡単にご紹介いたします。知っている人は「ナンダこんなこと!」とか「当たり前!」と思うかもしれませんが、その辺はご了承下さい。
そしてきもの屋さんで「きもの屋言葉」を使っていて解らない時はご遠慮なく聞いて下さい。きもの屋さん本人が気付いていないときもありますから・・・。
(もっと詳しくとか、地方によって違うとか色々あるかもしれませんが、どうかご了承下さい。)
 

■「藍染」
藍の染料(草木〜蓼・たで)で染めることです。この染を家業とする家を昔は「紺屋」とよんでいました。いわゆる「紺屋の白袴」ですね。
「後染め・あとぞめ」・生糸のまま織ってから白く精練し、染色したものを言います。小紋や友禅に染めることを言います。

■「洗張り・あらいはり」
着物独特のお手入れ法。着物を解いてから水洗いをします。解きますので後から仕立てるようになります。
「袷・あわせ」・裏地(胴裏など)がついている着物のこと。基本としては6〜9月以外に着用します。

■「居敷あて・いしきあて」
着物や長襦袢の裏で、お尻の部分に補強やたるみ防止を目的に取り付ける布のことを言います。おもに単衣(ひとえ・裏地のない着物や襦袢)の裏に使います。

■「ウールの着物」
ウールとはご存知のように羊毛素材です。羊毛素材の着物のことをウールの着物といいますが、同じ素材をセル、モス(モスリン)、メリンスとも呼びます。(男物や袴、襦袢地に使われる広幅で織られたのウールの生地)

■「ウコンの風呂敷」
植物のウコン(健康食品で有名な黄色い植物)で染められた黄色い風呂敷です。虫を寄せ付けないので着物を包んでおくのに適していると言われます。
「上前・うわまえ」・着物を着たとき上になる部分を指します。着たときの左側になります。反対を下前(したまえ)といいます。

■「衣紋・えもん」
着物の衿の開いている箇所をいいます。「衣紋掛け」とは着物のハンガーです。

■「衿芯・えりしん」
半衿を取り付けるときに襦袢と半衿の間に縫い付けたり(三河芯・綿素材)、中に通したりする芯(ナイロン芯)をいいます。

■「大島紬」
主に鹿児島県奄美大島で織られている織物。鹿児島県や宮崎県でも織られています。手織りの経緯絣はとても高価な紬です。薄手での織り上がりで光沢のある生地です。

■「衽・おくみ」
着物の前身頃につづいて巾を構成している布をいいます。(着物の前の左右)

■「おはしょり」
帯の下に出た着物の丈(長さ)の余った部分をいいます。

■「帯芯・おびしん」
帯を仕立てるときに帯の中に入れる芯(綿素材)です。

■「御召・おめし」
御召縮緬といい、先に染めた(先染)絹糸を織り上げた布地。縮緬地になっていて、しっかりしていて艶があり柔らかく着易い生地です。

■「織りの着物・おりのきもの」
紬や木綿など柄を織り出している着物で、主にカジュアルで着られる着物が多いです。先染めの着物とも言います。

■「絣・かすり」
色糸や白糸でかすれたように織られ柄付けされた木綿や紬。久留米絣など地方の特産品となっているものも多いです。

■「肩上げ・かたあげ」
簡単に言うと子ども用の着物の肩をつまんで裄(ゆき)を調節する方法です。昔は十八才まで肩上げをしたそうです。今はせいぜい中学生までですかね。成長に合わせて解いていけばよいと思います。

■「型染め・かたぞめ」
柄、模様をくり抜いた型紙(手すき和紙を柿渋で2〜3枚張り合わせた紙)を生地の上に乗せて染めた着物です。

■「機械織り・きかいおり」
機械で織られた紬や木綿。しっかり織られお手ごろな値段です。

■「着尺・きじゃく」
いわゆる着物を仕立てる反物のことを言います。幅が約36cm、長さが3丈(約12m)、振袖や喪服(裾廻し付き)は4丈(約16m)物と言われています。

■「着丈・きたけ」
身丈(みたけ)ともいい、着物を着付けしたときの長さ。肩もしくは背から(または襟の下)から裾までの長さを計った寸法です。おはしょりをとるため体の寸法(襟の下から裾まで)より着物の寸法が長くなります。(だいたい顔ひとつ分の長さ)

■「京袋帯・きょうふくろおび」
袋帯の形で長さが名古屋帯と同じになります。一重太鼓を結ぶようになります。ちなみに名古屋帯の長さは九尺五寸(約3.6m)袋帯は一丈二尺(約4.6m)です。

■「錦紗・きんしゃ」
錦紗縮緬のことを言います。糸の配列を経緯で変えながら織り、しぼ立ちが細かく、いく分滑らかな生地です。

■「組紐・くみひも」
細い糸を組んで、太い糸に仕上げたもの。帯〆や羽織紐に使います。

■「献上柄・けんじょうがら」
博多織に使われる図柄で「献上柄」は仏具の独鈷(どっこ)と華皿をあしらった独特の紋様。黒田藩が幕府に献上したのがこの名の由来です。

■「交織・こうしょく」
経糸と緯糸の素材を変えて織ったもの。例えば絹とウールとか麻と綿、絹と化繊などが代表である。

■「小紋」
細かい柄を型染めにしたものを小紋と呼びます。小紋染めの略ですね。おしゃれ着や街着として活用します。

■「先染め・さきぞめ」
生糸を精練し、染色をしてから織ったものを言います。紬、大島、久留米絣、御召しなどがこれにあたります。

■「更紗・さらさ」
安土桃山時代以降にインドから渡来した幾何学模様で動植物を描いた柄です。

■「地紋・じもん」
無地の布に織り込まれた文様。紋綸子とか紋縮緬など地紋が入っている布です。

■「繻子・しゅす」
朱子とも書かれ、滑らかで光沢のある布地。普通は経糸を表面に浮かして織られます。

■「正絹・しょうけん」
素材が絹100%のことを指します。正に絹であるということです。

■「人絹・じんけん」
人造絹糸の略でレーヨンの布地をいいます。

■「全通・ぜんつう」
全体に柄が描かれた帯です。

■「袖丈・そでたけ」
袖の長さ(たもとの長さ)

■「染めの着物・そめのきもの」
縮緬や綸子の生地に染色で柄を出した着物。織りの着物より格が上で後染めの着物ともいいます。フォーマル系に使います。

■「畳紙・たとうし」
着物を保管するときに使う包む和紙のことで、虫や湿気を避けます。

■「袂・たもと」
袖全体のことをいいます。

■「縮緬・ちりめん」
染めの着物地としてはポピュラーで、表面にシボがあり、やや厚みがある生地。強く撚った(よった・ねじったの意)横糸を使って織られています。丹後や長浜が有名な産地です。

■「紗・しゃ」
布面に透き間がある、さらりとした盛夏用の生地を言います。

■「上布・じょうふ」
着尺地の麻織物のことを上布といいます。

■「対丈・ついたけ」
着丈が自分の背からくるぶしまでと同じサイズでおはしょりを出さないで着る着物を言います。(地方ではツッタケと発音するところもあります。)

■「作り帯・つくりおび」
背中部分の結びがすでに仕立てられた帯。簡単に帯を締めることが出来ます。

■「綴れ帯・つづれおび」
帯を織る職人が伸ばした爪を使い、帯地をひっかきながら模様を付けた帯のことを言います。よこ糸を強く打ち込み、織物の表面がたて糸しか見えないような特殊な織物です。裏表とも同様な模様が織られ、技術と手間を要した帯です。

■「紬・つむぎ」
もともとは養蚕業者や農家の人がくず糸を紡いで自宅用に織った着物で、生地に独特の節があります。地方により特色があり結城紬で昔ながらの技法で織られているものは無形文化財の指定を受けています。また技術的に難しいのは絣柄でたて糸とよこ糸とで織られた絣で細かくなるほど難しくなります。

■「胴抜き・どうぬき」
裾と袖だけ袷に、胴の部分を単衣に仕立てた着物。木綿や紬のような厚みがある生地で、袷にすると厚みが出すぎるものに用います。

■「長尺・ながじゃく」
基準より長く織られたり仕立てられた帯や帯〆、帯揚げなどにいいます。

■「名古屋帯・なごやおび」
胴に巻く部分を半幅に、背中部分を袋状に仕立てた帯を言います。長さは九尺五寸(約3.6m)になります。

■「羽裏・はうら」
羽織やコートの裏地です。

■「博多織・はかたおり」
福岡県博多地方の特産品織物。絹の硬いもので帯や伊達〆などに使われ、仏具の独鈷(どっこ)と華皿をあしらった独特の紋様の「献上柄」は有名です。

■「羽尺・はじゃく」
羽織用の生地。

■「八掛・はっかけ」
袷の着物の裾と袖口に使われる布生地。関西では「八掛」(布を8つに裁ち、掛け合わせて縫うのでこの名がついています。)、関東では裾回しと言います。

■「八寸帯・はっすんおび」
袋名古屋帯とも呼ばれます。お太鼓の幅が八寸あり、帯芯は使わず前は2つに折って締めます。仕立てはかがるだけで簡単です。

■「半幅帯・はんはばおび」
帯の幅が約15pと袋帯の半分の幅に仕立てられた帯のことを言います。浴衣や袴の下の帯に使われます。

■「単衣・ひとえ」
裏地のついていない着物。初夏や初秋がシーズンですがウール類や木綿は秋冬も単衣仕立てです。

■「紅型・びんがた」
華やかで幾何学的な花柄を染つけた着物、沖縄の那覇地方が発祥です。

■「袋帯・ふくろおび」
幅約30p(八寸二分)、長さ4.6m(一丈二尺)が基準の帯で、袋織りで二重に織った帯で主にフォーマルに使われますがオシャレ着に使われるものもあります。

■「丸洗い・まるあらい」
きもの全体を洗います。浴衣やウールの着物などはこの全体洗いをしま
す。お店によって洗い方が様々ですので、絹の着物はお店の人と良く相談してからお
願いしたほうが良いでしょう。

■「銘仙・めいせん」
平織りの絹織物で、昭和初期まで関東地方の織物産地を中心に生産されてきました。柄が大きく織り出されているのが特徴で、最近のアンティーク着物ブームで人気がでてきました。

■「友禅・ゆうぜん」
柄を筆で染めつけ、もち米の糊で仕上げる染色法。分業化され仮仕立、下絵、糊置、色挿しなど別々の人によってなされて完成します。

■「綸子・りんず」
たて糸を表面に浮かして織られる光沢があり滑らかな生地です。

■「絽・ろ」
夏用に使われる生地でたて糸の絡みで透ける織物。夏用のフォーマルから小紋、喪服や長襦袢、半衿、帯揚げ、帯などにも使われます。